こんにちは、現役美容師のKAZUです。
さて、今日も僕のサロンには、帽子を深々と被り、申し訳なさそうな顔でドアを叩くお客さまがやってきました。その帽子を取ってもらうと……あちゃー、やっぱりね。鏡に映っているのは、まるで豹柄か、はたまた熟しすぎたバナナのような、激しい「ムラ」が刻まれた髪。そう、市販のブリーチ剤でセルフカラーを強行した結果です。
まず、最初にはっきり言わせてもらいます。30代から50代の、いわゆる「大人世代」の皆さんが、ドラッグストアで1,000円そこらのブリーチ剤を買って、自分で色を抜こうなんて考えるのは、ハッキリ言って「無謀」以外の何物でもありません。それ、自分の髪を自分でハサミを持って切るのと同じくらい、いや、それ以上にリスクが高いことなんですよ。
でも、やってしまったものは仕方ない。怒っても髪の色は戻りませんからね。今日は、市販ブリーチで大失敗して絶望しているあなたに、20年以上ハサミとカラー剤を握り続けてきた僕が、プロの現場でどうやってその「惨事」を修正しているのか、その裏側を包み隠さずお話しします。
市販のブリーチがこれほどまでにムラになる本当の理由
そもそも、なぜ市販のブリーチはあんなにムラになるのか。理由はシンプルです。市販のブリーチ剤というのは、どんなに太くて硬い髪質の人でも、一回で無理やり色を抜けるように「薬のパワーが最強設定」にされているんです。そんな劇薬を、見えもしない後頭部や、体温が高い根元、ダメージでスカスカな毛先に、素人さんが均一に塗れるわけがありません。
美容師は、根元の1センチをあけて塗る、ダメージがある部分は薬を弱める、室温や体温を計算して放置時間を変える……といった、外科手術並みの細かい調整をしています。それを「えいっ!」と一気に塗ってしまえば、根元だけが真っ白に抜け、中間はオレンジ色、毛先はダメージで沈んだ色、という地獄のような「三段活用」が完成するわけです。
特に30代を過ぎると、髪の体力は急激に落ちています。若い頃なら耐えられた刺激も、今のあなたの髪には致命傷になりかねない。一度「チリチリ」になった髪は、どんな高級なトリートメントをしても、死んだ細胞ですから元には戻りません。市販ブリーチの失敗は、単なる色のムラではなく、髪の寿命そのものを削っているんだということを、まずは自覚してくださいね。
プロでも冷や汗をかく修正作業の難しさ
「美容室に行けば、魔法みたいに一瞬で綺麗に直してくれるんでしょ?」と思っているなら、それは大きな間違いです。僕たちプロにとって、セルフブリーチの修正ほど神経を削る仕事はありません。正直に言いましょう、新規のお客さまで「セルフでムラになったのを直してほしい」と言われると、どんなベテラン美容師でも心の中で「勘弁してくれ……」と叫んでいます(笑)。
なぜなら、髪の状態が場所によってバラバラだからです。ここは0.5%の弱い薬で、ここは6%の強い薬で、といった具合に、数センチ単位で塗り分けなければなりません。少しでも判断を誤れば、髪が溶けて切れてしまう。まさに、崩れかけの家を、基礎から補強しながらリフォームするような作業なんです。
だから、修正には通常のカラーの2倍、3倍の時間がかかりますし、料金だって当然、高くなります。セルフで1,000円浮かそうとした結果、美容室で数万円払って5時間拘束される。これ、全然お得じゃないですよね?
プロが教える「ムラ消し」の驚きの修正テクニック
さて、ここからは「じゃあ、どうやって直すの?」というお話です。僕が現場で行っている、失敗を帳消しにするための驚きの修正術をいくつかご紹介しましょう。これを知れば、プロの技術がどれだけ繊細か分かってもらえるはずです。
「逆算のハイライト」で境界線をぼかす
一番やってはいけないのは、ムラを隠すためにさらに全体をブリーチすること。これをやると、明るいところはさらに明るくなり、暗いところは抜けないまま、髪の毛が死にます。僕らがやるのは「逆算」です。あえて暗い部分に細かくハイライト(筋状のブリーチ)を入れ、逆に明るすぎる部分にはローライト(暗い色)を入れます。そうすることで、ムラを「あえて狙ったデザイン」のように馴染ませていくんです。これを僕らは「修正のデザイン化」と呼んでいます。
低アルカリカラーによる「色補正」の魔術
ムラになった髪は、色の吸い込みやすさが場所によって違います。そこに普通のカラー剤を乗せると、またムラになります。そこで使うのが、アルカリを極限まで抑えた「補正専用」の薬剤です。オレンジ色が強い場所には青紫を、黄色すぎる場所には薄い紫を。絵の具を混ぜるように、一箇所ずつ色味を調合して、視覚的に均一に見えるように「色の魔法」をかけていきます。
ダメージ部分を救う「プレックス剤」の投入
セルフブリーチでズタボロになった髪にそのままカラーをしても、1週間で色が抜けて元の豹柄に戻ります。そこで、髪の内部結びつきを強制的に補強する「プレックス成分」という特殊な処理剤をたっぷり使います。これを使うことで、なんとか色を保持できる土台を再構築するんです。これは市販品には絶対に入っていない、プロ専用の「延命装置」のようなものです。
大人世代が「セルフブリーチ」を卒業すべき理由
この記事を読んでいる30代から50代の皆さんに、あえて辛口で言わせてください。この年齢になったら、髪のツヤは「品格」に直結します。どんなに高い服を着ていても、髪がムラだらけでパサパサだったら、それだけで老けて見えてしまいます。若いうちは勢いでなんとかなりますが、大人の美しさは「手間と知識」で決まるんです。
セルフブリーチを繰り返していると、いざという時に本当にやりたい髪型ができなくなります。パーマもかけられない、縮毛矯正も断られる。そんな「八方塞がり」の状態になる前に、どうか自分を大切にする意味でも、髪はプロに預けてほしいんです。
もし今、鏡を見て「どうしよう……」と絶望しているなら、もう自分で何とかしようとしないでください。追いブリーチなんて、火に油を注ぐようなものです。すぐに信頼できる美容師に連絡して、今の状況を正直に話しましょう。僕ら美容師は、怒りたいんじゃなくて、あなたの髪を救いたいだけなんですから。
あなたの髪を「救える」のはプロの技術だけ
市販ブリーチの失敗は、確かに帳消しにできます。でも、それは魔法ではなく、緻密な計算と長年の経験に裏打ちされた「職人技」によるものです。修正した後は、しばらくは髪をいたわる期間が必要です。サロントリートメントはもちろん、ホームケアも徹底してもらいます。そうやって二人三脚で、半年から一年かけて、ようやく「普通の綺麗な髪」に戻していくんです。
髪型が決まれば、一日の気分が上がりますよね。鏡を見るのが楽しくなります。その幸せを、たった1,000円の節約のために投げ出さないでください。この記事を読んで、「あ、自分のことだ」と思ったあなた。今すぐそのブリーチ剤を置いて、美容室に予約の電話を入れましょう。それが、一番の近道ですよ。
悩みがあれば、担当の美容師さんに相談するのが一番ですよ。一人で抱え込まず、プロの知恵を借りてくださいね。あなたの髪が、またツヤを取り戻して輝く日を応援しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。これからも皆さんの髪が美しくあるための本音を伝えていきますので、どうぞよろしくお願いします。


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